テナントを選んだ際の保険を知っておこう

日本は秋、冬にかけて空気が乾燥し、火災が発生しやすくなる傾向にあります。
昨年度の火災件数は約4万件で、その内建物火災が約2万件です。
建物火災の約半数は住宅物件で起こり、もう半分は一般物件での火災です。
住宅物件、一般物件ともに火災発生数が1万件にも上るととても看過できません。
火事になると負傷者が出るほか、建物、家財、所持品などが消失してしまうため、
未然に火災を防ぎたいものですが、それでも万が一に備えて保険に入る人がほとんどです。
アパートやマンションを賃貸している人であれば、入居時に保険への加入を半強制的に求められた方もいると思います。
戸建て住宅の場合でも約8割は保険に加入しています。

住宅向けの火災保険の補償内容は主に建物と家財です。
住宅として利用しない一般物件である貸店舗、事務所、倉庫、工場などの建物にも火災保険があります。
住宅物件と一般物件の火災保険の違いは主に保険料と保証内容です。
一般物件の火災保険は住宅向けの保険に比べると保険料がやや高めです。
保険会社によって費用や補償内容が変わってきますが、一般物件の保険料は業種と店舗面積、保証金額で決まります。
事務所やオフィスなどはガス設備の使用がほとんどありませんが、飲食店は火気の取り扱いがあり、火事を起こすリスクが高くなるため、その分保険料が上がります。
一見、火気使用のない事務所やオフィスなら火災保険に入らない選択肢もありそうですが、繁華街のビルや商業施設などテナントが密集していると、他のテナントからもらい火をして火事になる可能性があります。
また、放火と放火疑いによる火事が年間で数千件ほど起きているため、テナントを構える際は使用用途を問わず、防災対策に合わせて火災保険の加入は欠かせません。

火災保険に入ることでテナントが保証を受けられるのは、主に店内設備と什器、商品です。
テナントとして借りる建物については、建物の所有者や管理者が保険に入っていることも関係して、建物に保証は及びません。
そして、テナント物件を経営する際は火災保険にとどまらず、様々なケースに対応できる保険に加入することをお勧めします。
火災保険の延長でオプションをつけられる場合もあれば、一括して保証してくれるタイプの保険もあります。
例えば、火災以外に天災でも幅広く保証してもらえるようにしておくと万が一の場合に安心です。
落雷、地震、風災、水災、爆発などはいつどこで起こるか予想しえないものです。
中には津波などの天災を対象外にしているケースもあるので、保険会社に確認しておきましょう。

また、施設賠償責任保険もあります。
施設の所有者、管理者に加えて施設の使用者も加入できます。
近隣の店舗や第三者に被害が及び、賠償しなければならない事態になったとき、保険に加入していないと莫大な賠償額を抱えることになります。
施設賠償責任保険はお店の水回りで水漏れを起こして階下のテナントの備品や商品に損害が及んだ場合や、お店がガス爆発するなどして近隣の店舗が営業できなくなった場合などに適用されます。
その他にもお店の広告看板が落下して第三者である通行人が怪我をした際などにも補償が及びます。
他店舗や第三者に賠償を支払うと高額になるケースが多いため、保険に入っておくことで足元を救われることも少なくありません。

さらに、飲食店を経営する場合は衛生上の問題を避けて通れません。
昨年飲食店で起きた食中毒は約600件ほど報告されています。
食中毒があると食品衛生法に基づいて行政処分が下り、営業停止や営業禁止、最悪の場合は営業許可の取り消しがおこなわれます。
営業停止になると最長で1ヶ月ほど営業できません。
その期間中は営業による売上がないため、大きな損失を被ることになります。
お客様との信頼問題にも関わるため、衛生管理を怠らないように日々心掛けることが大切ですが、食中毒などの感染症を起こしてしまった場合にも保険は有用です。
休業補償を受け取れるほか、被害者への治療費、慰謝料などの負担を軽減することができます。
テナント物件を探す際は保険に加入することを忘れないようにしましょう。
保証内容と条件は保険会社によって様々で、保証額がアップするほど保険料は高くなるので、掛け金の上限を決めて補償内容を吟味することが大切です。
もしものときに万全の備えをして、店舗経営を充実させましょう。