テナントに関するよくあるトラブル

■用法を正確にすること

事業用賃貸、つまり貸テナントを契約する際は、契約時にどのような事業を行うのか貸主に申告する必要があります。
飲食店であっても、カフェやバー、スナックといった本格的な調理を伴わず、酒や飲み物を主として提供する「軽飲食」なのか、
ラーメン、中華、焼肉など厨房を備えて火を扱い調理する飲食業種のうち、特に油や匂い、煙が多くでる「重飲食」なのか説明する義務があります。
例えば、貸テナントの中には軽飲食は可、重飲食は不可としているところもあります。
実際は重飲食に該当するのに、軽飲食と説明して重飲食店を開業した場合、それは「用法順守義務違反」となります。
用法順守義務違反に関するトラブルはよくある話です。
「用法順守義務違反=即契約解除」ではありませんが、それを理由に賃貸借契約の解除を求めた事例は過去にもいくつかあります。
そんな事態にならないためにも、契約前に「用法を正確にすること」が大切です。
貸主、つまり大家さんに入居者がどのような事業を行うかをきちんと理解されていればトラブルも起こりません。
逆をかえせば、大家さんにきちんとどのような事業を行うのか説明すればトラブルは起こらないということです。
契約時は大家さんに説明した事業を行う予定だったが、契約後に考えが変わって違う事業になったという場合は、
開業準備に取り掛かる前に、大家さんに説明しに行くことをおすすめします。
用法順守義務違反だと大家さんに判断されてしまうと、最悪の場合裁判に発展してしまうこともあります。
そんなことにならないためにも、誠実な対応を心掛けましょう。

■契約の種類を要確認しよう

貸テナント契約において注意しなくてはならないのが「契約の種類」です。
テナント契約は、一般住宅賃貸物件とは違い、店舗の情報や契約内容を契約書でしっかり書面に残します。
また、契約の際には必ず「重要事項説明」が行われます。
物件の概要や賃料、保証金、支払い方法や物件の引渡し時期など細かく記載されているので、しっかりチェックしなくてはなりません。
そしてテナント契約の種類も確認する必要があります。
賃貸契約には「普通建物賃貸借契約」「定期建物賃貸借契約」の2つの種類があるのをご存知でしょうか。

【普通建物賃貸借契約と定期建物賃貸借契約の違い】

1.契約更新の違い

普通建物賃貸借契約は、契約時に定められた契約期間が満了する際に、賃貸契約を更新することができます。
物件を借りている側、つまり借主が解約を希望しなければ、そのまま引き続き契約を更新することが可能です。
定期建物賃貸借契約は、契約時に定められた契約期間が満了した時点で、契約が終了します。
つまり契約を更新することができないというわけです。
この契約更新の違いを理解しないで契約してしまうと大変なことになってしまいます。
店舗として内装や設備に高額なお金をかけてしまい、後々その契約が「定期建物賃貸借契約」だと判明したらどうしましょうか。
どんなに高額なお金をかけたとしても、契約満了とともに退去しなくてはならないのです。
また、やっとお客さまが付いてきたのに、移転しなくてはならなくなったら本当に大変です。
しかし、定期建物賃貸借契約であっても、双方の合意があれば再契約することも可能です。
ただその際は、普通建物賃貸借契約と違い大きなコストがかかることになると覚えておきましょう。
契約の種類をきちんと分かっておらず、契約更新時にトラブルになることがあります。
だからこそ、契約の種類を確認することが大切なのです。

2.途中解約

普通建物賃貸借契約の場合、契約の解約をするには借主から貸主へ解約したい旨を伝えます。
それを一般的に「解約予告」と言います。
解約予告時期は最初の契約書に定められており、通常退去の3~6ヶ月前の告知を求められるでしょう。
解約予告をしたとしても、退去までの期間は通常通りの賃料を支払う義務があります。
契約期間中であってもきちんと解約予告を行い、契約書に定められた通りに退去すれば問題ありません。
定期建物賃貸借契約の場合は、原則として中途解約は不可です。
契約期間満了まできちんと賃料を支払い借りることが前提の契約となっています。

このように、テナント契約には2つの種類があり、それぞれ大きな違いがあります。
そのため、契約の種類を契約する前に確認することが大切です。

■まとめ

いかがでしたか。テナントに関するよくあるトラブルを説明しました。
契約後にトラブルにならないよう契約前にきちんと確認しておくことが大切です。
そして分からないことがあれば、そのまま放置せず不動産会社や大家さんに質問するように心掛けましょう。

テナント契約時のいろいろなお金の話

■権利金について

テナント物件を探していると「権利金」という言葉を目にすると思います。
権利金とは、テナント物件などの賃貸借契約を結ぶ際に、一時金として賃貸人に支払うお金です。
テナントを借りて開業する利益の対価として支払うものだと解釈して良いでしょう。
敷金と似たようなものとして挙げられるのが権利金です。
敷金は債務不履行が無ければ、退去する際に全額返金されますが、権利金は返金されることはありません。
テナント契約時に支払うお金がもう一つあります。それが礼金です。
礼金は権利金と同じようなものという扱いをされています。
しかし、権利金と礼金は本質的な部分で違いがあります。
確かに権利金も礼金も、テナント契約時に一時金として支払われるものですし、敷金や保証金のように退去時に返還されません。
そういった共通点があることで同じように扱われているのだと言えるでしょう。
では双方の違いはというとどのような点でしょうか。
権利金は先程説明したように「開業する利益の対価」です。
礼金は貸主に対して支払うお礼です。
一般的な住まいとなる賃貸物件に権利金はありません。
それは営業目的の事業用の利用ではないためです。

権利金の返還はないと説明しましたが、一部だけ返ってくる場合もあります。
一般的に賃貸契約の契約期間は決まっています。
その期間に対しての権利金のため、仮に途中解約をした場合は一部のみ返還されると考えて下さい。

権利金は物件によって金額に差があります。
立地が良く、設備も充実しているなど魅力のある物件は対価性が高いため権利金もそれ相応になります。
逆に魅力のない物件は権利金も少なくなるでしょう。
支払う権利金が高額であっても、それ以上のメリットを回収できると考えられるのであれば良いと思います。
テナント物件であっても権利金がない場合も多々あります。
権利金がある物件とない物件では経費にも違いが出てくるので、それを考慮して選ぶことが大切です。

■造作譲渡金について

テナント物件において良くある「居抜き物件」。
特に飲食店に多く見られます。
内装、厨房設備、空調設備などそのまま残されており、すぐにお店をオープンすることが可能です。
そんな物件を契約する際に必要なのが「造作譲渡金」です。
内装や厨房設備、空調設備といった設備を借主が買取るための費用のことです。
居抜き物件の場合、テナント物件の賃貸借契約とは別に、その物件の前の事業主と「造作買取」契約を結ぶ必要があります。

【造作譲渡のメリット】

前の事業主が高い費用をかけて作り上げた設備や内装をそのまま使用することで、初期費用を抑えることができます。
通常であれば高額なコストがかかる工事を削減することができるのは大きなメリットであると言えるでしょう。
また、開業までの時間を短縮できるのもメリットの一つです。
内装工事や設備工事は予想よりも時間がかかるものです。
その時間を短縮することができるためすぐに開業することが可能です。
そしてもう一つ、メリットとして挙げることができるのは以前のお店の顧客を引き継げる可能性があることです。
飲食店に限りますが、同じ場所に別の飲食店が出来れば、当然以前のお店に通われていたお客さまを取り入れることが可能です。

【造作譲渡の注意点】

造作譲渡はメリットだけでなく、注意しなくてはならないこともあります。
せっかくの設備が壊れていたり、何らかの不具合があることがあります。
造作譲渡、つまり居抜き物件を契約する前に、まずはそういった設備の確認をしなくてはなりません。
そしてもう一つ、確認しなくてはならないことがあります。
それは「設備がリース契約でないかどうか」です。
設備をそのまま使用するつもりであっても、リース契約だとリース会社が持って行ってしまう可能性があります。
設備は前の契約者の物なのか、それともリース契約なのかをきちんと確認することが大切です。

■まとめ

テナントの契約には敷金・礼金・仲介手数料だけでなく、権利金や造作譲渡金が発生することもあります。
権利金や造作譲渡金は物件によって違いがあります。
権利金も造作譲渡金もある物件とそうでない物件があります。
それにより経費にも違いが出てくるので、良く考えて契約するように心掛けましょう。